男はふて腐れていた。
主家の小僧から使い走りを押し付けられたせいで
親友である西脇哲哉との約束をすっぽかす羽目になったからだ。
――相変わらず下らねえ用事で呼びつけやがる。
――憂さ晴らしに道場でひと暴れするか。
あの愛すべき馬鹿野郎共をどうしごいでやろうかと考え始めた矢先。
――ぞくり
彼は足の爪先から脳の天辺へと激しい衝動が駆け抜けたのを、確かに感じた。
今し方すれ違った、一人の女性が脳裏に焼き付いて離れない。
長い黒髪を靡かせ、優雅に歩を進め、けれどもどこか憂いを滲ませた瞳。
こいつだ。
確信する。
そう。
彼は、まさしく運命とすれ違ったのだ。
・
・
・
貧乏な若侍、片倉重蔵。
商家の一人娘、中村蛍。
この二人が出会った瞬間、物語は走り出す!
二人三脚で困難に立ち向かい、成り上がっていく痛快立志伝!
時代劇フォーマットと和風伝奇の融合。
チャンバラ有り、異能有り。
影法師ならではの世界観をお楽しみ下さい。
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Windows上で読み進める絵、音楽付きの紙芝居です。一風変わってますが、いわゆるビジュアルノベルです。
全四話にて構成されています。完成版は価格¥1000で、一〜四話全てを収録。
前作『
流れ落ちる調べに乗せて』の過去の話という位置付けですが、ほぼ独立した話ですので前作をプレイされてない方も気軽にどうぞ。
第一話『勝てば官軍』をフリー配布しております。
ダウンロードページからどうぞ!
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とある小藩の末端の家に生まれた、血気盛んな若侍。
ずけずけと相手の懐に入っていく無神経さを疎ましく思われることもあるが、生来の無邪気さと、裏表のない真っ直ぐさがそれ以上に人を惹きつける。
また、幼少から続けている剣術の腕は相当なもので、
若くして名瀬道場師範を務めている。
境遇に流されるまま生きていく事に疑問を抱き、
己の身の振りを考えている。
近隣の町に住む、ある商家の一人娘。
友人である『かな』に会いに来た帰り道、すれ違っただけの男に求婚をされてしまう。
頭脳明晰、容姿端麗、気立ても良しと三拍子揃った評判を持つが、反面、理屈で外面を取り繕っている自分自身を小賢しいと嫌悪もしている。
父親とは何かしら反りの合わないところがあった様子。
町を仕切る大問屋の長男。
重蔵とは十年来の付き合いで、重蔵が突っ走って行った後の後始末はもっぱら哲哉の仕事である。
基本的に優しい性格だが締めるところは締める性質で、商人としての才覚も確か。
組合からは次代を担う長になると期待されている。
慎重過ぎる性格が災いして、大事なところでいつも出足が鈍る自分を情けなく思っている。
町の大社『九狼神社』の巫女。
ほとんど目の見えない母に代わり、神社に関わる業務をこなすしっかり者――の筈が、どこか抜けている。
霊感も強く、高い的中率を誇る占いなどを営んでいる為、町の人々の精神的な支えとして頼りにされている。
想い人はいるらしいが一向に進展しない。
名瀬道場のもうひとりの師範。
通称『跡継殿』
小柄ながら剣の腕前は重蔵をも凌ぎ、渾名の通り、道場の跡取りの座を約束されている。
また、書道の才能も素晴らしく、剣術の傍ら、寺子屋で読み書きを教えている。
名瀬一刀流に対する思い入れは、並々ならぬものがある。
名瀬道場の師範代であり、重蔵達の悪友。
掴みどころのない、空を流れる雲のような男で、町の大店の跡取り息子でありながら、あちこち遊び歩いている。
道場通いも熱心とは言い難く、たまにふらりと顔を出す程度だが、才能は確かなもので、破格の速さで師範代に任ぜられた。
漠然としたものではあるが、ある夢を胸に秘めている。
蛍と弥生の友人。
二人とほぼ同じ年頃に見えるが、その外見に似つかわしくない落ち着きと幅広い知識を有している。
色々な場所へ旅をして歩いており、町に帰ってきた時は弥生が管理する九狼神社に間借りをしている様子。
育ちは謎に包まれているが、劇中の町の出身であることは間違いないらしい。
蛍の実家にて丁稚奉公している娘。
元は諸国を流れる旅芸人の一座だったが、紆余曲折の末、奉公人として引き取られた。
蛍に対しては忠誠にも似た感情を抱いており、突然消えてしまった彼女を取り戻さんと、暇を見つけてはあちこち探し回っている。
蛍に対する依存の原因は、彼女自身が抱える秘密にあるらしいが……。
町に訪れる官軍の長。
とは言っても大半は平民にて構成された非正規集団。
母も分からぬ浪人者の息子で、元は義栄館という古い道場を仕切っていた。
ふとしたことで公家との繋がりを持ち、道場の仲間と共に隊を結成する。
公家の後ろ盾を用いて、これまでの劣等感や鬱憤を晴らす行為に身を投じている。
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